診療科

心臓血管外科

概要

2025年4月より心臓血管外科の体制が変更になりました。常勤医2名で、信州大学医学部心臓血管外科と連携しながら、虚血性心疾患、弁膜症、大動脈・末梢血管疾患の外科治療を中心に、診療にあたっていきます。

急性大動脈解離等の緊急手術が必要な疾患への対応は現状困難であり、北信地区の医療機関や信州大学医学部附属病院と協力して対応いたします。

今後も当院循環器内科と協働しながら、良質な外科治療を提供していきたいと考えています。

診療内容、特徴

狭心症・心筋梗塞といった虚血性心疾患に対して、冠動脈バイパス術を行っております。人工心肺を用いない心拍動下冠動脈バイパス術(OPCAB)を積極的に取り入れておりますが、虚血性心筋症や僧帽弁閉鎖不全症が併存し、左心機能が低下している症例も多く、そういった場合には、人工心肺使用下に手術(僧帽弁形成術等を同時に施行など)をおこなう方針としております。

大動脈弁疾患に対しては、当院では基本的に弁置換術を施行しております。近年、超高齢者や手術困難な大動脈弁狭窄症に対し、経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)が増加傾向にありまが、TAVIにつきましては、経験豊富な長野赤十字病院へ紹介する事も可能です。僧帽弁疾患に対しては、病変の程度にもよりますが 自己弁を温存する弁形成術を第一選択とし、併存することの多い心房細動に対しては、積極的に Maze手術を同時施行する方針です。心房中隔欠損症等の成人先天性心疾患に対する根治手術、粘液腫等の心臓腫瘍手術にも対応しております。

大動脈瘤に対する人工血管置換術も積極的に施行しています。合併症のリスクが高いなどの胸部・腹部大動脈瘤症例では、信州大学医学部心臓血管外科と連携しながらステントグラフト内挿術にも対応していく予定です。様々な併存症のために手術を躊躇されていた患者さんにも手術が可能な場合もありますので、一度相談して頂ければ幸いです。

その他、閉塞性動脈硬化症に対する下肢動脈バイパス術等にも対応していますが、現時点で下肢静脈瘤には対応しておりませんので、他院を紹介させていただきます。

当院で施行している手術

虚血性心疾患:冠動脈バイパス術
心臓弁膜症:弁置換術、弁形成術

(TAVIが必要な患者さんは、長野赤十字病院等に紹介させていただきます)
大動脈疾患: 人工血管置換術、(ステントグラフト内挿術)
成人の先天性心疾患:根治術
閉塞性動脈硬化症:末梢動脈バイパス術(膝上のみ)

 

心臓血管外科で行う代表的な手術
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冠動脈バイパス術

狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患において、カテーテル治療では対応が難しい複雑な病変(冠動脈3領域すべてに狭窄がある場合や、左冠動脈の近位部病変、閉塞病変など)の場合、自家動静脈を使用した冠動脈バイパス術を行います。冠動脈バイパス術は50年の歴史がある確立された治療法で、長期にわたる有効性も証明されています。当科では、<より低侵襲な手術>をモットーに、心拍動下冠動脈バイパス術(OPCAB=オプキャブ)を積極的に取り入れております(人工心肺装置を使用する場合もあります)。OPCABは、心臓が動いている状態で血管の吻合をする外科医の技量のみならず、術中の血行動態を維持する麻酔科医、遅滞なく手術を介助する看護師や、緊急時人工心肺使用となった場合の対応に備える臨床工学技士のサポートなど、手術室全体の総合力が必要となります。

弁膜症手術(弁置換・弁形成)
全身の血液循環を担うポンプの役割を果たすのが心臓ですが、血液の流れを一定方向に向かわせるため、心臓の中には大動脈弁や僧帽弁といった逆流防止弁がついています。これらの弁機能に異常をきたした病態を弁膜症といい、高度な場合には外科的治療が必要となります。心臓内の弁を治療する弁膜症手術においては、心臓を止めて手術を行うため、人工心肺装置を装着して、機械で循環を維持しながら手術を行います。近年、動脈硬化性疾患の増加とともに、大動脈弁狭窄症の患者さんは増加傾向にあり、65歳以上の方の2-4%は大動脈弁狭窄症の診断がつくと言われています。当科で行う弁膜症手術のおよそ半数は大動脈弁置換術です。弁置換術に使用する人工弁には、カーボン製の機械弁と、ウシやブタの心臓の一部を使用した生体弁があります。機械弁の場合にはワーファリンによる抗凝固療法が一生必要となり、生体弁の場合には耐用年数の問題があるなど、年齢や背景因子、患者さんの意見などを十分考慮した上で、十分なインフォームドコンセントの元、使用人工弁の選択をしています。僧帽弁閉鎖不全症においては、弁の組織の異常が軽度であれば、自己弁を温存する弁形成を第一選択とします。
大動脈疾患に対する手術(人工血管置換術・ステントグラフト内挿術)

動脈硬化や炎症など種々の原因で脆くなった大動脈の壁が膨らんだ状態となる大動脈瘤や、3層構造からなる大動脈の最内層の膜(内膜)に亀裂が入り、そこから血管壁内に流入した血流により血管が縦に裂けてしまう大動脈解離など、血管の形状、病変の部位によっては外科的な治療が必要となります。特に心臓の近くの大動脈が裂けてしまっているスタンフォードA型と呼ばれる急性大動脈解離では、破裂や心臓や脳など主要血管の血流障害をきたす可能性が高く、緊急手術が必要となりますが、現在緊急手術対応が困難であるため、救急部・循環器内科と協力して24時間対応可能な体制をとりつつ、北信地区の医療機関や信州大学医学部附属病院と連携して対応いたします。

また、当院は2012年に腹部および胸部のステントグラフト実施施設の認定を受け、同治療も積極的に取り入れてきました。ステントグラフト内挿術は、足の付け根を3㎝ほど切開して、大腿動脈という足の付け根のところを走行する動脈から、血管の内側にステントと言われる骨格を持った人工血管を折りたたんだ状態で挿入し、動脈瘤の部分を裏打ちするように人工血管を留置する、低侵襲な大動脈瘤に対する新しい治療法です。血管の走行などに左右されるため、すべての大動脈瘤に対応できるわけではないのですが、当科でもステントグラフト治療がおこなえるよう準備しています。

 

 

医師紹介

後藤 博久 (ごとう ひろひさ)

1989(平成元)年卒

役職 副診療部長
心臓血管外科部長
総合診療科統括部長
救急科・集中治療科部長
心臓血管外科副部長
患者総合支援センター長
資格 日本胸部外科学会認定医・指導医
日本外科学会認定登録医
日本救急医学会救急科専門医
ICLSファシリテーター/コースディレクター(CMD)
日本プライマリ・ケア連合学会認定医・指導医
JSPO日本スポーツ協会公認スポーツドクター
日本医師会認定健康スポーツ医
日本医師会認定産業医
日本病院総合診療医学会認定医・指導医
日本DMAT隊員
インフェクションコントロールドクター
介護支援専門員
専門分野 心臓血管外科一般、救急蘇生医学、総合診療
藏井 誠 (くらい まこと)

平成7年卒

役職 心臓血管外科副部長、呼吸器外科統括部長
資格 日本外科学会認定外科専門医・指導医
日本呼吸器学会専門医・指導医
呼吸器外科専門医・評議員
CT検診認定医
がん治療認定医
呼吸器専門医
気管支鏡専門医
胸腔鏡安全技術認定医
専門分野 呼吸器外科、心臓血管外科

担当医表

担当医
 後藤 後藤(PM)