結石治療センター
診療科の特徴
尿路結石とは
尿は腎臓で作られます。腎臓で作られた尿は、尿管という細い管を通って、膀胱(ぼうこう)に流れていきます。尿中には、いろいろな成分が含まれており、濃度が濃くなると結晶ができ、それが大きくなると結石を形成します。腎臓にあるものを腎結石、腎臓から尿管へ降りたものを、尿管結石といいます。小さい結石は、膀胱まで下りてしまえば、排尿時に体外に排出されてしまうことが多いですが、出ないまま膀胱にあるものを膀胱結石、尿道(尿管ではありません)につまってしまったものを尿道結石と呼びます。
結石の成分によっても分類されます。代表的なものは、シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、尿酸、感染結石(リン酸マグネシウムアンモニウム)、シスチン結石などです。結石の7〜8割はカルシウム系の結石で、薬で溶かすことができないため、結石を排出させなくてはなりません。
尿路結石の罹患率は食生活,生活習慣などの変化に応じ年々増加しており、男性では7人に1人、女性では15人に1人が生涯の間に一度は罹患するとされています。
尿路結石のうち腎・尿管結石は上部尿路結石と呼ぼれ、尿路結石全体の95%を占めます。特に尿管結石は激しい痛みを伴います。症状を伴う尿路結石の70%は自然に出ますが、残りの30%には手術を要します。
1984年に本邦に体外衝撃波結石破砕術(ESWL)が導入されてから、尿路結石に対する治療は大きく様変わりしました。さらに、大きな腎結石には経皮的腎砕石術(PNL)、ESWLでは破砕困難な尿管結石には経尿道的尿管砕石術(TUL)という内視鏡手術を第一選択にするようガイドラインでも推奨されるようになりました。以前主流だった開腹手術は現在では1%未満となり、ESWLや内視鏡手術が治療の主体となっています。2009年の全国統計では、結石治療の内訳は、ESWLが81%、TULが18%、PNLが1%でした。
結石治療センター
当院では、1992年に県内で2番目に体外衝撃波結石破砕装置を導入し、2020年3月までに、6500件以上のESWLを行ってきました。ESWL装置のほか、レーザーや圧縮空気を用いた砕石装置、PNL、TULによる内視鏡治療機器も整備しており、尿路結石に対するさまざまな手術治療が可能です。結石治療に重点をおいている当院では、全ての上部尿路結石に対し開腹手術することなく治療するよう心がけており、総合的な結石治療が可能な施設です。最近では、難治性の結石や多発結石に対しては、内視鏡治療の方が治療効果が優れているため、積極的にPNLやTULを行うようになってきました。最近の治療成績では、成功率(結石がほとんど除去できた割合)は、TULが89%、PNLが95%でした。2020年の当院の手術件数は、ESWL 174件、PNL 14件、TUL 31件でした。
今後も、患者さんの負担軽減と、より高い治療効果のある尿路結石治療に努めてまいります。
主な疾患と治療方法
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結石の症状
結石の症状は色々ありますが,代表的なものは,腰痛・腹痛と血尿です.特に、結石が尿管に詰まってしまい、尿が急に流れなくなると、非常に強い痛みの発作を起こします。腎臓に結石があるだけの場合には、無症状のことが多いです。また、結石が詰まった状態が長い期間続くと、腎臓が腫れて水ぶくれ状態となり(水腎症といいます)、腎機能が悪化してしまいます。バイ菌がついて熱を出した場合には、菌が血液の中に入って敗血症という重症感染症を引き起こす危険があり、緊急処置を必要とすることもあります。
膀胱結石では、血尿や頻尿・排尿時痛などの膀胱炎症状を起こします。前立腺肥大で尿の出にくい方や、尿道にカテーテルを入れている方にできやすい結石です。また、尿道結石は男性に多く、膀胱から排出された結石が尿道に詰まって、急に尿が出にくくなります。
当センターでは、様々な尿路結石に対し、病状に応じた治療を行っています。
腎・尿管結石
検査
- 尿検査:血尿や膿尿(感染していないか)の有無を確認します。
- 血液検査:炎症の有無や腎機能の評価を行います。
- 腹部レントゲン:結石の有無を確認します(レントゲンに写らない結石もあります)
- 腹部エコー:腎臓の腫れや、結石の有無を確認します。
- CT:結石の評価に最も有用。結石の位置や大きさ、尿路全体の評価ができます。また、腹痛を起こす他の疾患の除外診断にも役立ちます。
ただし、必ずしもすべての検査が必要になるわけではありません。
治療方法
腎・尿管結石の大部分は、膀胱まで降りてしまえば、あとは排尿時に外へ排出されます。したがって、通常大きさが5mm位のものまでは、痛み止めの治療のみで経過を見る方針となります。しかし、大きくて自然には出ない結石や、痛みの症状が強いもの、腎機能障害を起こしているもの、感染症を合併しているものは、外科的な治療(手術療法)が必要です。
代表的な手術治療は3つあります。一番低侵襲な(体への負担が少ない)治療法は、ESWL(体外衝撃波砕石術)というものです。患者さんに治療台の上に寝ていただき、結石にレントゲンで焦点を合わせて、衝撃波を当てて砕く方法です。無麻酔で、繰り返し治療が可能です。ただし、結石の大きさや硬さ、位置によっては十分に砕石できないことがあります。
2番目は、TUL(経尿道的尿管砕石術)と呼ばれるものです。膀胱から尿管の中へ直接細い内視鏡を挿入し、レーザーで結石を砕き、取り除く方法です。ESWLではなかなか割れない結石や、大きな尿管結石、長期間詰まっているものが対象になります。麻酔が必要ですが、確実に結石を割れる利点があります。
3番目は、PNL(経皮的腎砕石術)と呼ばれるものです。これは、体外から直接腎臓に管を入れ、内視鏡でみながら石を割って取り除く方法です。非常に大きな腎結石が対象になります。
また、いくつかの治療法を組み合わせて行う場合もあります。
尿路結石の予防
腎・尿管結石は再発しやすいといわれ、実際半数近くの人が、数年以内の再発を経験しています。原因は様々ですが、体質や食生活も大きく関係しています。一番多いのが、シュウ酸カルシウム結石といわれるものですが、これは、尿中のシュウ酸濃度が高くなるとできやすいといわれています。カルシウムを多く摂取すると、尿へ出てくるシュウ酸が少なくなるといわれています。また、シュウ酸を多く含む飲食物(ほうれん草、チョコレート、紅茶、コーヒーなど)のとりすぎに注意が必要です。痛風の人は、尿酸結石ができやすいといわれています。総合的には、バランスのいい食生活と、適度な水分摂取(ただし、ビールや清涼飲料は勧められません)・運動を心がけ、メタボリックシンドロームにならないようにすることが、結石予防にもつながるといえます。
何度も再発を繰り返す場合には、副甲状腺の異常(副甲状腺機能亢進症)や遺伝性の疾患(シスチン尿症)など、何らかの病気が隠れている場合があります。また、常用薬に問題がある場合もあります。結石治療以外に、専門医による原因疾患の治療が必要になります。
膀胱・尿道結石
検査
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- 尿検査:血尿や膿尿(感染していないか)の有無を確認します。
- 腹部レントゲン:結石の有無を確認します(レントゲンに映らない結石もあります)
- 腹部エコー:膀胱内の結石の有無や、前立腺の大きさ、形の評価をします。
- 尿道結石の有無の確認や、前立腺の評価をします。
- CT:結石の位置や大きさ、尿路全体の評価ができます。
ただし、必ずしもすべての検査が必要になるわけではありません。
治療方法
膀胱結石は、砕石鉗子、レーザー、圧縮空気などの砕石装置を用いて、内視鏡的に砕いて取り出します。非常に大きな結石は、開腹して摘出する場合もあります。尿道結石も内視鏡的に取り出します。
前立腺肥大症に合併した結石の場合には、肥大症の手術を同時に行うことがあります。
医師紹介
中沢 昌樹 (なかざわ まさき)
1996(平成8)年卒
役職 | 泌尿器科部長、結石治療センター長 |
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資格 | 日本泌尿器科学会専門医・指導医 泌尿器腹腔鏡技術認定制度認定医 日本内視鏡外科学会技術認定医(泌尿器腹腔鏡) ロボット(daVinci)手術認定医 日本排尿機能学会認定医 |
専門分野 | 排尿障害、女性泌尿器科、腹腔鏡手術など |
鈴木 尚徳 (すずき ひさのり)
2002(平成14)年卒
役職 | 泌尿器科部長、臨床研修センター副センター長 |
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資格 | 日本泌尿器科学会専門医・指導医 日本がん治療認定医機構認定医 泌尿器腹腔鏡技術認定制度認定医 日本内視鏡外科学会技術認定医(泌尿器腹腔鏡) 日本化学療法学会抗菌化学療法認定医 日本スポーツ協会公認スポーツドクター 日本医師会認定健康スポーツ医 長野県DMAT隊員 |
専門分野 | 泌尿器腫瘍、男性不妊症、尿路感染症など |
松髙 淳 (まつたか じゅん)
2014(平成26)年卒
役職 | 泌尿器科医長 |
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資格 | 日本泌尿器科学会泌尿器科専門医 泌尿器腹腔鏡技術認定制度認定医 ロボット(da Vinci)手術認定医 |
専門分野 |