診療科

呼吸器外科

診療内容

呼吸器外科とは肺、胸壁、縦隔の疾患を対象とした外科の分野で、肺癌、転移性腫瘍、胸腺腫、胸膜中皮腫などの悪性腫瘍の外科治療(切除)をはじめ、自然気胸、外傷性血気胸、肺や縦隔の良性腫瘍、膿胸などに対する外科治療や、縦隔リンパ節・肺の生検などの外科的手技を要する診療を担当しています。

手術件数

年度 手術総数 肺がん 転移性肺腫瘍 気胸など
R2 49 27 5 10
H31/R1 58 30 9 9
H30 66 34 12 7
H29 86 45 6 17
H28 64 38 5 13
H27 83 37 13 11
H26 95 61 2 14
H25 82 48 4 5
H24 70 39 6 12
H23 85 54 9 9
H22 76 47 9 9

 

増加している肺癌

当科で一番多いのは、原発性肺癌症例です。肺癌に対しては現在でも特効薬はなく、腫瘍が周囲への浸潤や遠隔転移で広がる前に「早期発見/早期診断/早期治療(手術)」する事が大変重要となります。篠ノ井総合病院には肺癌の診療に関して、胸部読影のエキスパートである放射線科、呼吸器の専門的な診察に携わり気管支鏡検査も行っている呼吸器内科、外科手術を担当する呼吸器外科、腫瘍から採取される細胞や病理組織の診断にあたる病理科と、各領域の専門家が常勤で揃っています。これに加えて、たとえ手術中の管理が困難な症例であっても協力的に応じてくれる麻酔科医師や、万一術中に不測の事態があった場合でも迅速に対応できる心臓血管外科医師の存在、手術室や病棟で患者さんを温かく見守ってくれる看護師らの協力があり、診療体制はとても充実しております。

肺癌

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肺がんとは
肺がんは、気管支や肺胞の細胞が何らかの原因でがん化したものです。進行すると、がん細胞は周りの組織を壊しながら増殖し、血液やリンパ液の流れにのってリンパ節、反対側の肺、骨、脳など、他の臓器に転移していきます。肺がんは、日本全国で1年間に約125,000人が診断されます。男性に多い傾向にあり、60歳ごろから急激に増加し、高齢になるほど多くなります。男女ともに4番目に多いがんです
肺がんの種類

肺がんは大きく非小細胞肺がん(肺がんの85%)と小細胞肺がん(15%)に分けられています。非小細胞肺がんには、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんがあります。

非小細胞肺がん 腺がん

 

肺の末梢にできやすく、近年増加している。非喫煙者の女性肺がんはこのタイプが多い
扁平上皮がん 太い気管支にできやすく血痰や咳などの症状を生じやすいタイプ
大細胞がん 肺の末梢に大きな腫瘤をつくることが多く、リンパ節や遠隔の臓器に転移することがやや多いとされる
小細胞肺がん 扁平上皮がんと同様に太い気管支にできやすく、抗がん剤や放射線治療が効きやすいがんですが、早い時期からリンパ節や遠隔の臓器に転移しやすい悪性度の高い肺がん
肺がんの診断

肺がんの治療を開始するためには、肺がんの組織診断と病期(ステージともいい、病気の進み具合のことです)診断を行い、最適の治療を選択する必要があります。<病期(ステージ)診断に必要な検査>

胸腹部CT検査、頭部MRI検査(脳転移の診断)、PET検査

<肺の病巣の診断に必要な検査>

気管支鏡検査
外科的生検 など

<そのほかの検査>

血液検査(腫瘍マーカー:CEA、CYFRA、SCC、ProGRP など)

肺がんの治療
肺がんの治療には、主に3つの治療方法が有ります。 手術でがん病巣を切除する外科療法、抗がん剤を用いる化学療法、放射線をあてる放射線療法があります。どの治療方法を選ぶかは、先ほど述べた肺がんの組織型、病期(ステージ)、患者さんの健康状態などを基に、医師、患者さん本人とそのご家族とともに十分相談し選択する形をとります。また、ひとつだけの治療ではなく、いくつかの治療法を組み合わせる集学的治療を要することも有ります。
肺がんの手術

現時点では、肺がんの根治的治療は、手術による切除のみと考えられています。このため肺癌ガイドライン上、非小細胞肺がんのⅠ期、Ⅱ期(場合によってⅢ期の一部)までは根治的治療として病巣と周辺リンパ節を取り除く外科療法が推奨されています。ただし、Ⅰ期やⅡ期でも健康状態などの理由で手術ができない場合は放射線や化学療法を行います。またⅡ期やⅢ期の進行した状態では外科療法が行われた後に、再発予防のため化学療法を追加することが推奨されています。ちなみに全身にがんが進んでしまったⅢ期やⅣ期では化学療法(+放射線療法)を行います。<肺がん手術の標準治療とは>

肺がんの標準的手術は、病巣のある肺葉を切除する肺葉切除と周辺のリンパ節を取り除くリンパ節郭清です。肺は右が上葉、中葉、下葉の3葉に左は上葉、下葉の2葉に分かれています。この肺葉を葉単位で摘除するのが肺葉切除です。同時に肺門(肺の気管支や肺動脈の入り口)や縦隔(肺のすぐ近くの領域のこと)のリンパ節も摘出してきます(リンパ節郭清)。転移の可能性のあるリンパ節を取り除き検査する事により、最終的な病期の判定を行うことが主目的となります。

<他の手術方法は>

肺がんの手術は、他に、肺全摘術、周辺臓器を病巣とともに切除する拡大手術、病巣の部分だけを切除する縮小手術があります。病巣の位置、大きさ、浸潤具合で術式が決まります。中でも縮小手術については、最近の 検診で発見される小さい肺がんの増加により、主流になりつつあります。

<縮小手術とは>

がん病巣のある肺葉の一部を、がん病巣とともに切除する手術法で、肺区域切除と肺部分切除があります。以前は、呼吸機能の低下のある患者さんで、葉切除が難しいとされた場合に、このような縮小手術が行われていました。しかし、現在は、CT検診で、小さいがんが多く発見されるようになり、2cm以下、CTで周囲への浸潤がなさそうな性状の場合、呼吸機能を温存する目的で肺区域切除や肺部分切除が行われるようになってきました。

<胸腔鏡手術と開胸手術とは>

開胸手術は10数センチの皮膚切開創で、開胸器により肋骨と肋骨の間を大きく開けて、手術操作を行う手術のことです。

胸腔鏡手術は胸部に4-5cmの小切開創1カ所と2cm程度の切開創2、3カ所おいて、カメラや手術器具を挿入し、開胸器を使用しないで手術操作を行う手術のことです。

当科でも、ほとんどの手術を胸腔鏡による手術で行っています。胸腔鏡手術は切開創が小さく患者さんへの負担が少なくなることが利点といえます。ただし、腫瘍が大きい時や、周辺臓器への浸潤が認められ隣接臓器の合併切除を行う場合は開胸手術が必要となります。

<手術時間、入院期間>

手術時間は、通常の肺がんの胸腔鏡下肺葉切除ならば約3時間です。これに麻酔導入、覚醒時間や手術室での準備時間が加わります。手術室への入室から退室までは平均5時間くらいです。また標準的な入院期間は、手術前2日、手術後1週間程度です。

<手術後の治療>

肺がんの根治切除の結果、最終的な病期がⅠA3期以上の場合、術後再発を予防するために化学療法を行うことが肺癌ガイドラインですすめられています。患者さんの状態を考慮し、本人・ご家族とご相談の上、最終的に施行するか否かを決定しています。

肺がん手術の予後

肺がん手術では、原発病巣を完全に切除しても再発する事があります。実は非常に微小な転移・再発巣は、初回手術時から画像で指摘できないだけで、秘かに存在しているのです。手術により原病巣を切除した後、数ヶ月から数年後発見される転移や再発は、このような検査ではわからない、微小な転移巣がある期間経過し、増大した結果、CT検査などで発見されるのです。転移・再発病巣にも治療を行います。転移・再発巣の部位や広がりを調べ、手術治療、放射線治療、化学療法を行います。転移・再発巣も早期に発見し治療を行う事で、進行を抑える事が十分可能な時代になってきています。ゆえに、手術後も定期検査が大事です。肺がんは様々な治療を組み合わせて最善を尽くしても、根治が難しいがんです。進行するほど、再発することが多くなりますので、やはり初期の段階で発見し、治療を行う早期発見・早期治療が最重要です。

 

開業医の皆様へ

普段からかかりつけの患者さんに対して、特に症状がなくとも年1〜2度は胸部レントゲン写真を撮影されていることと思います。もし、炎症性の陰影で精査加療が必要と思われるものは「呼吸器内科外来」へ、肺野の腫瘤性病変が疑われる場合は当科へご紹介ください。胸部検診の二次精密検査に関しても、同様にご紹介ください。当院では呼吸器系疾患の精密検査や加療を必要とされる患者さんに対しては、呼吸器内科/呼吸器外科/放射線科でお互いに協力して診療にあたっています。

医師紹介

藏井 誠 (くらい まこと)

平成7年卒

役職 呼吸器外科統括部長
資格 日本外科学会認定外科専門医・指導医
日本呼吸器学会専門医・指導医
呼吸器外科専門医・評議員
CT検診認定医
がん治療認定医
呼吸器専門医
気管支鏡専門医
胸腔鏡安全技術認定医
専門分野  肺がん、横隔疾患、気胸・膿胸などの呼吸器疾患
青木 孝學 (あおき たかひさ)

昭和62年卒

役職 呼吸器外科部長
資格 日本外科学会認定外科専門医
専門分野  呼吸器外科(肺、胸壁、縦隔の疾患を対象とした外科)

担当医表

呼吸器外科
担当医師 青木 藏井 青木/藏井