多焦点(遠近両用)眼内レンズによる白内障手術を行っています。
白内障は、加齢などにより水晶体という眼の中のレンズが濁ることを言います。白内障手術ではレンズを取り除いた後、代わりに眼内レンズという人工のレンズを入れます。従来のレンズはカメラで言えばピントが固定されて動かせない状態で、一定の距離のところが一番よく見え、その距離から離れる、近づく、に従って徐々にピントが合わなくなって見づらくなってきます(図1、2)。これはいわゆる老眼と同じ状態です。そのため従来のレンズを使った白内障手術の後はきちんと見るためには多くの人がメガネをかける必要がありました。
今回多焦点 (遠近両用)眼内レンズが新たに厚生労働省より認可されました。篠ノ井病院眼科では、この新しい眼内レンズを導入します。このレンズを使った白内障手術では、手術後遠くにも近くにもピントが合いやすい状態となり(図3)、手術後メガネの必要性をかなり少なくできると考えられます。ただし、眼の状態などにより全ての患者さんの白内障手術にこのレンズが使えるわけではありません。また、下記の注意点にあるように、従来の眼内レンズよりも全ての面で優れているわけではなく、従来の眼内レンズの方が見やすい状況もありえます。多焦点眼内レンズは、いわゆる遠近両用のメガネとは原理が全く異なります。遠近両用のメガネはレンズの上の方は遠く、下の方は近くと視線の移動によって近くと遠くを見るのに対し、多焦点眼内レンズは目に入ってきた光を、「近くにピントが合った光」、「遠くにピントが合った光」に分けて、両方を網膜に映し、脳でその映像を切り替えて近くも遠くも見ようとするものです(図4)。ですからその見え方も使い心地も全く異なると考えられます。
これからも篠ノ井病院眼科では、常に最先端の医療技術を用いて最善の結果が出せるように努力していきます。

図1 遠くにピントを合わせた従来の眼内レンズでの見え方のイメージ。遠くははっきり見えるが、近くはぼやけている。

図2 近くにピントを合わせた従来の眼内レンズでの見え方のイメージ。図1と反対で近くははっきり見えるが、遠くはぼやけている。

図3 多焦点(遠近両用)眼内レンズの見え方のイメージ。遠くの景色と近くの携帯電話が両方はっきり見えている。よく見るとテーブルの上の食器など(中間距離)は、ぼやけている。

図4 遠近両用眼内レンズ。縞模様が眼に入ってきた光を、「遠くにピントが合った光」、「近くにピントが合った光」に振り分ける。
多焦点(遠近両用)眼内レンズの注意点
① 日常生活の大部分はメガネがなくても不自由しなくなる可能性が高いですが、メガネが全く必要なくなるという訳ではありません。遠くと近く(30cm位)にはピントが合いやすいですが、中間距離(デスクトップパソコンのディスプレイなどの50cm~1m程度の距離)は見にくいと感じ、メガネをかけた方が楽と感じる方が多いようです(図3)。
② このレンズは慣れが必要で視力が最良になるまでには順応期間が必要です。場合によっては半年~1年程度かかることもあります。
③ 若い人の「いい目」のように遠くから近くまで全ての距離が鮮明に見えるわけではありません。若い人の眼は水晶体の厚みを変えてピントを合わせているため、全ての距離が鮮明に見えますが、多焦点(遠近両用)眼内レンズでは眼に入ってきた光を、近くにピントが合った光、遠くにピントが合った光、に分けてしまいますので、遠く、近く、それぞれの見え方は「従来の眼内レンズ+メガネ」の状態より(少しではありますが)悪いと思われます。
④ 従来からの眼内レンズでも起こるのですが、暗いところで強い光をまぶしく感じたり、電灯や対向車のライトの周りに輪がかかって見えたりすることがあります。多焦点(遠近両用)眼内レンズでは従来の眼内レンズよりこれらの現象が起こりやすいです(図5)。
⑤ 眼内レンズの度数は手術前の検査をもとに予測して決めるのですが、ずれてしまった場合にはメガネが必要になることもあります。あるいは屈折矯正手術で対処することができる場合もありますが、当院では屈折矯正手術はしていませんので他施設に紹介することになります。その場合の費用は別途自費になります。
⑥ 白内障手術の合併症が起こった場合、その程度によっては多焦点(遠近両用)眼内レンズを入れられない場合があります。
⑦ 多焦点(遠近両用)眼内レンズの費用は日帰り手術で術前の診察、術後3ヶ月までの診察料を含めて、片眼52万5千円(税込み)ですが通常は両眼手術が勧められます。入院による治療を希望される方は別途自費になります。

図5 多焦点眼内レンズによる夜の見え方のイメージ。車のライトなどの周りに輪がかかって見えている。(このイメージ図では左側、2台の遠くの車を見ると分かりやすいと思います。)
・・・ 2009/06/10








