体外受精・胚移植について
当院では1990年、長野県で最初の体外受精に成功、1995年には長野県で最初の顕微授精に成功しました。


■体外受精・胚移植の適応

体外受精・胚移植以外の治療法によっては、妊娠成立の見込みがないと判断される、①卵管性不妊症、②乏精子症、③免疫性不妊症(抗精子抗体症陽性)、④原因不明不妊症、⑤その他が本法の適応になります。体外受精・胚移植以外の治療法を十分に行い、なおかつ妊娠しない場合や、他の治療法が不可能な場合が適応となります。本法は夫婦間のみで行います。当院の生命倫理委員会では夫婦以外の体外受精は認められておりません。



■本法の過程の概略


▲卵の採取

一般には経腟超音波ガイド下に採卵をします。(静脈麻酔で行います)現在のところ残念ながら卵を一つだけ採取し、移植したのでは成績が良くありません。このためできるだけ多数の排卵直前の卵を採取する必要がありますので酢酸ブセレリン(スプレキュア)で排卵を抑制し、hMGという注射の排卵誘発剤を用い、また卵胞の発育をホルモン検査や超音波断層法で観察します。

▲精子の準備

採卵の日(2日前にわかります)に夫婦で来院していただき、時間を指定して、病院内で採取していただきます。用手的に採取していただいた精子を洗浄、培養後用います。精子をあらかじめ凍結保存しておくこともできます。

▲体外受精・培養

小さなシャーレの中で卵と精子を一緒にします。一緒にしてから間もなく卵に精子が進入し受精します。受精後は、子宮内への移植に適したところまで約2日間培養します。

▲受精卵(胚)の子宮内への移植

細いカテーテルで受精卵を子宮内に移植します。3時間の安静が必要です。移植後、黄体ホルモン療法を行います。(内服、注射)

▲胎児の発育

その後、着床の有無や胎児の発育を、ホルモン検査や超音波断層法で観察します。

■現時点での成功率
(赤ちゃんが産まれるところまでいく確率:流産、子宮外妊娠を除く)

採卵あたりの妊娠率は約15~20%、受精卵がうまくできた人の胚移植あたりの妊娠率は20~25%で、平均すると18~20%程度の成功率です。



■副作用および本法による先天異常発生の可能性


経腟超音波ガイド下採卵は一般には安全性の高いものですが、血管や腸を損傷することも考えられます。さらに、これに際して行われる麻酔についても副作用が起こる可能性があります。この際、開腹手術を行い、10日間ほど入院することがあります。 成功率を向上させるために数個の卵を採取し、受精させ子宮に移植しますから、多胎妊娠(双胎以上)になる可能性があります。着床しても流産に至る可能性が少なくありません。また、子宮外妊娠が起こることも報告されています。

体外受精・胚移植によって生まれた児に先天異常が多いとする報告はありません。

卵巣過剰刺激症候群といって、約20%の人で卵巣が大きく腫大して腹水や胸水がたまり、呼吸困難となり、また血液が濃縮して脳血栓を起こし稀に半身麻痺になり入院することもあります。また極めて稀に死亡した人もあるとの報告があります。



■本法の実施が不可能な場合があります。

次のような場合は本法の実施が不可能です。

・お母さんが非常に高年齢の場合

・腹腔内に広範囲の炎症や癒着があり、採卵が困難な場合

・子宮腔内に広範な癒着があったり、子宮に高度の奇形がある場合

・お母さんに、妊娠の継続を不可能にするような重症の合併症がある場合

また次のような場合は本法の実施を途中で中止します。

・卵胞が全く発育しない場合

・採卵できなかった場合

・卵がまったく受精しなかった場合



■正常な発育が明らかに不可能と考えられる受精卵の取り扱い


多精子受精卵など、正常な発育が明らかに不可能と考えられる受精卵については子宮に移植しません。その後は法や行政の定めるところに従い、受精卵を丁重に取り扱います。またこのような受精卵について原因解明のための検索を行うことがあります。

 

■顕微授精


精子の状態が著しく悪い方には顕微授精を行います。当院では最も難しいとされる卵細胞質内精子注入法を行っています。卵がこわれる可能性も高く、成功率(生児獲得率)13~16%です。もっと成績の良いといわれる施設に紹介希望の方があれば、紹介致します。

採卵までは普通の体外受精と同じです。睾丸より直接精子を取り出して行う方法もあります。外来にてご相談下さい。



■費用


費用は、体外受精・胚移植の成功・不成功にかかわらずお支払い頂くことになります。健康保険が適応されていませんので自費になります。

・体外受精 283,500円

・顕微授精 315,000円



以上の他、検査、薬代等、実費を頂くことがあります。採卵、受精は、外来通院で行います。



■特定不妊治療助成制度


H16年度より、特定不妊治療(体外受精、顕微授精)に対し助成金が交付される制度が始まりました。当院は助成金対象指定医療機関です。手続きは最寄の保健所となっています。



■体外受精、顕微授精の成績(当院)


<2000年>

区分  症例数 /採卵回数/ 胚移植回数 / 妊娠数 /症例当りの妊娠率 / 胚移植当りの妊娠率

体外受精  60 / 75 / 71  / 15**  / 25% / 21%

顕微受精  50 / 76 / 73* / 213*** / 26% / 18%

*MESA 9(妊娠2) ** 流産3、外妊2 ***流産2



<2001年>  

症例数 / 採卵回数 妊娠数 / 症例当りの妊娠率 /胚移植当りの妊娠率/ 胚移植当たりの生産率

体外受精 56 / 72 / 18** / 32.1% / 25.4% / 18.3%

顕微授精 47 / 64* / 20*** / 42.6% / 34.5% / 25.9%

*MESA 0 TESA 2 ** 流産5 ***流産5

(注)生産率:流産を除いた生きて生まれる赤ちゃんの割合



体外受精の成績を比較するのはとても難しいと思います。

一つは対象が違うという事です。体外受精は年齢の若い人程、成功しやすく、年齢が上がって特に40才を超えると妊娠率は10%以下です。また、妊娠する人は3-5回のうちに妊娠することが多く、5回以上不成功の方はとても妊娠しにくいと思います。したがって、年齢制限、回数制限をしている病院の成績は良くなります。

もう一つは統計の取り方です。日本産婦人科学会では胎嚢を認めたもの全てを妊娠としていますが、体外受精は流産率が高く、約30%が流産してしまい、実際に生まれるところまでいった生産率(生きて産まれた赤ちゃんの割合)は低くなります。



■誠に勝手ながら

次の期間に月経が始まった場合はできませんので、ご了承下さい。

4月15日~5月5日、7月15日~8月10日、12月15日~1月3日



■妊娠準備学級


毎月、妊娠準備学級(不妊症教室・無料です)で詳細に説明しておりますのでご参加ください。

夫婦で参加された方にのみ体外受精の同意書をさしあげています。